需要は作るものとよく言われる。といっても何もないところに無理矢理作るというのがその意味するところではなくて、本人がぼんやり思っている不満や欲求を形にしてみせることを「需要を作る」というのだろう。そしてその手管というのはやっぱり金になるってことだ。誰もがぼんやり思っている不満や欲求を形にしてみせるとそれはマーケットという規模になる。
一方、これをやらなければ大変なことになりますよという不安を煽る手口もあるが、これはどうかと思う。最近TVで流れている歯周病菌が全身に回ってどうたらみたいなCMはその典型だ。虫唾が走る。ついでに言えば保険屋は同類だから嫌いだ。必要悪だとは思うが。
よく知っていてこだわりがある人ほどターゲットになりやすいというのもある。お茶の銘柄や魚の旬を知らなければ、安いプライベートブランドのお茶やどこのなんだか分からない安売りしている解凍した魚を買うだろう。しかしなまじ知っていたりするからマナガツオに手が出るわけだし、初夏に桜海老や白魚を注文してみたり自分の足にフィットした革靴をオーダーしてみたりしたくなっちゃうわけだ。知らなければ餃子靴で満足していたかもしれないものを…。
でも、それでそういうものを食べたり作ったりしたってんで本人が満足したり、あわよくばブログのネタにできちゃったりするわけで、「口車に乗せられた! いっぱい食わされた!」と怒る筋合いのものではなかろう。いや極東ブログの著者も怒っているわけではないのだが、なにかしら納得していない感じがする文面だ。
モンド21というスカパーのチャンネルで
「岡田斗司夫のプチクリ学園」という番組があって、おもちゃ屋バンダイのガンプラ(ガンダムのプラモデル)のマーケティングをしている川口克己という人が出演していた。ガンプラが大ブームになった小学生の頃からこの人の名前は知っていたので興味を持って観てみた。まあガンダムそのものの話は余所においておいて、模型人口が減るという話題になったとき、岡田氏が「いまの若い人に模型の楽しみ方を教えてやらなければ」という話をしていた。買う人はいるが作る人が減っていると。要は需要を作らなければいけないという話だ。そういうところまで面倒をみてやらないとという感じの話しぶりで、岡田氏は「ネットでガンプラ教室を」とか盛んに提案していた。しかし模型を趣味にしない人が減って困るのは模型業界のほうの事情であって、消費者側の事情ではない。
自分もプラモデル(ガンプラはもちろんミリタリーも好きだった)を作らなくなったクチだ。社会人になって時間がなくなったというのもあるが、模型業界が作例として提示しているもののレベルがどんどん高くなって、下手なものを作れない気軽に作れないというプレッシャーになってしまったいうのが個人的な理由だ。そのその世界の人たちの間でそれが標準であり唯一目指すべき道だというコンセンサスができてしまっている、あるいはできているような錯覚を持ってしまっているのではないか。まだ模型を趣味にしている人たちからは「それは違う」という反論もあるだろうが、個人的な感想としては、そうだ。もちろんレベルが高いのはすばらしいことだが、価値観がそれだけなのが問題だ。
送り手側は「みんな勝手に気楽に楽しめばいい」とも言うのだが、どんどんレベルを上げて敷居を高くする方向に沿うものは具体的に提示して誘導しているが、「気楽に楽しめば」という方向には、具体的な提示をあまり見ない。そっちに広げたければ具体的な提示ももっとしてみてはどうですかとも思う。まあ自分にとってはいまや関係のない話なのだが、今でも多少は興味があったりワクワクしたりする世界なので、衰退する姿を見たくはない。
重要なのはやはりなんだかんだ言って女の子。女の子が模型に対してネガティブな意見を持たなくなれば、男の子もモテなくなることを気にしなくてよくなりお天道様の下で堂々と模型を語れるようになり裾野が広がる…と思うのだが、パンツが見えてるような年端も行かない女の子のフィギュアを手にしてテンション上げてる連中と同じ船に乗ってるんだから、女の子は未来永劫理解してくれんだろうなあ…。