一月前に比べたら天地の差。なにしろ降格ラインまで 6 ポイントというところまで落ち込んでいたのである。
それもこれも、すべてはかの愚将、グレイム・スーネス (Graeme Souness) のせいである。
いや、愚将は言い過ぎかもしれない。別のクラブではそれなりに結果を残してはいるようだから。
しかし、短気で単純で荒っぽくてイケイケなチームカラーのこのチームには合わないことこのうえないのは招聘前から分かっていたことだ。
分かっていなかったのは会長を筆頭とする経営陣だけだったのだろう。
就任してすぐ、パブで飲んでいて、隣にいたニューカッスルのサポーターに「スーネス、どう思う?」って訊いたら、ニコリともせず「いいんじゃない」と、これ以上その話題には触れたくないという顔をしてそっぽを向いてしまった。
それまで「St.James Park に行ったんだよ」とか言ったら「いいスタジアムだろう?」なんてニコニコしてた人が、である。
もちろん、そういう問いかけをすること自体、こっちもネガティブな反応の予想(期待)をしていることは分かるだろうし、そこから話を広げたがっているのも分かるだろう。
でも、彼はそっぽを向いてしまった。
本当に話したくないお題だったんだろう。
ある意味、部外者な自分は「おーい困っちゃうねぇ」ぐらいで済むのだが、地元出身のマジなサポーターにしてみたら、「冗談じゃないよ、せっかくコンスタントにヨーロッパも狙えるチームになってきたのに、あいつに台無しにされるよ」みたいな暗澹な気分に心の底からなってしまうのだろう。
地元サポーターにしたら、気に入っていた前任者 (サー・ボビー・ロブソン Sir Bobby Robson) 解任にも不愉快な思いをしていたのかもしれない。
よっぽどの思い入れがない限り、日本人が海外のひとつのチームのサポートを続けるということはないだろう。
自分なんかはその典型だと思うのだが、好きな選手がいるとか、戦うスタイルが好きだとか、そういう観点で追いかけている。
でも、地元のサポーターは、それこそ Everton の "once a blue, always a blue" なのだろうから、逃げ場がない。
「日本の総理大臣、あいつでいいの?」って言われているようなものだな、と思う。
で、病気のあと Magpies のユースコーチをしていたグレン・ローダー (Glen Roader) が 監督代行 (Caretaker Manager) に就任してからは、昨日の4試合まで3勝1分である。Chelsea のカントクのように、能力やカリスマ性に飛びぬけた人物というわけではないようなので、重しが取れてのびのびやれるようになって、本来の能力が発揮できていると見たほうが近いと思う。
サー・ボビーの末期にはいろいろと選手がワガママを言ってチームが騒がしくなることも多くなってたので、「そういうガキともにはいっちょガツンとお灸を据えてくれるカントクのほうがよかろう」と経営陣が考えたとしても不思議ではない。
スーネスも、自分ならそれができると思ったのだろう。ところがとんでもない、他のチームでもそういうヤンチャな選手と対立してチームから放出する、というのを繰り返していたような人物に、そんなことができるはずがないのだ。
練習中に選手に削られてその選手を削り返す監督なんて、聞いたことがない。そんな余裕がなくて狭量な人物に、ヤンチャな選手たちをまとめることができるわけがないのだ。厳格なのと狭量なのは違うのだ。
スーネスは、2部3部に定着して馴れてしまったチームの再建には向くかもしれないが、トップリーグのチームには向かない。
とりあえずスーネスを擁護してチームを降格させるという愚は犯さなかった経営陣は、いまのチームのよい点を伸ばす監督を連れてきて欲しいと思う。
1 - 0 PK で勝つより 3 - 4 で負けるほうがいいと言ったのは誰だったか。
でも、そういうチームであって欲しい。
いつか、2 - 6 で負けた Man. U に借りを返す試合を観にいけるように。